being qua being

情報的な何かと政治的な何か

ゲーム理論で考える脅しと協力をもうちょっと便利に使うため思考法

ゲーム理論ナッシュ均衡は何をどこまで説明してくれるのだろう。株式価格の予想は、美人投票において美の絶対評価を行うことではなく、均衡点を見出すことのようなものである。

誰もが値上がりすると考えている株が値上がりする。それは話題性のある新規公開株であったり、有力アナリストの推奨株であったりする。

切りの良い数字に注目が集まる理由も均衡である。その数字そのものにはなんの意味もない。キリがいいほうが人々のコンセンサスが集まりやすいからに過ぎない。

ゲームには必ず到達点が存在する?

均衡点は単なる気まぐれやブームで決まるものである場合が少なくないとしたら、そのゲームの数学的な要素、例えばプレイヤー数や、戦略の選択肢、それぞれの戦略を選択した場合の損得など、そのゲームの数学的な要素によってのみ結果が決まるのではない。ゲームの社会的・心理的側面がゲームに影響を持つことは至って理にかなっていることである。

このような自分の利益を最大限に増やす交渉や相手を出し抜こうと競争する場面は日常にあふれている。このような状況を扱うのが経済学におけるゲーム理論である。このゲーム理論においては必ず均衡点が存在することがわかっている。

そしてとくに重要とされているナッシュ均衡という均衡点はゲームの「解決策」であるという理論的根拠はたくさんある。なにより他の選択肢はすべて、欠点を持っている。

ナッシュ均衡の特徴は、どのプレイヤーの行動も相手の行動に対する最善の行動である。つまり、ナッシュ均衡以外では少なくとも1人のプレイヤーが最善でない行動を取らなければならない。

実験経済学の権威であるバージニア大学のチャールズ・ホルトとハーバード大学のアルビン・ロスは次のように書いている。

「この20年間の間に、ナッシュ均衡は経済学やその他の社会科学、行動科学を学ぶ者にとって欠かせないツールになった……概念の修正や一般化、洗練化もなされてきたが、戦略的なやり取りを分析する際は、いまでも基本的なナッシュ均衡の分析を出発点とすべきだ(その作業だけで結論に辿り着ける場合もある)」

こうした知見を現実にはどのように使うことができるだろう。そう思う人も多いかもしれないが、歴史を通して、人間や国家は確約や脅し、約束をし続けてきたことは言わずもがなである。

そして、こうした行動に信頼性が必要だということも直感的に理解していたし、単にこの種の戦略を実践するだけでなく、相手の戦略の上を行く戦略を考え出そうと務めてきた。

ギリシャ神話の英雄オデュッセウスは船のマストに自分を縛り付けることによって、セイレーンの歌声に誘惑されないという信頼性のある確約をした。子供にバツを与えると脅すだけでは信頼性がなく、「ママに怒られたいの?」と脅すほうが説得力があるのだ。

王たちは我が個や親族を他の王家と交換し、互いに「人質」を取ることにより、平和共存の約束に信頼性を持たせることができると理解していたのだ。

日常に潜むゲームの世界

すなわち、ゲーム理論というのは「駆け引き」であり、人間社会には必ず付きまとってくる交渉術の基礎となる理論なのだ。約束を守らせるにはどうするか考えるためには、水が上から下に流れるように必ず最後には均衡点に達する。

どこに終着点が行くのかを考えることができれば、先回りして相手の出してくるであろう手も予想することができるのだ。

自分がもっとも嬉しい結果を得るためには、時にはカマをかけたり、嫌いな奴でも我慢して協力関係になることで、最終的な果実を得るために考えを巡らせる必要があるのだ。

普段は意識していないかもしれないが、私達が日々やっている脅しと協力を意識することを通して、自分が無意識のうちに最終的にどんな果実を手に入れたいと思っているのかを知ることにもなるだろう。

手に入れたい果実とそれを手に入れるための戦略を意識した時にゲーム理論的思考を思い出して、思考を整理すれば、少しは駆け引き上手になれるかもしれない。

ゲーム理論入門 (日経文庫―経済学入門シリーズ)

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高校生からのゲーム理論 (ちくまプリマー新書)

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入門 ゲーム理論と情報の経済学

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