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地方自治体の財政破綻前に公共施設をどうするか~人口動態の変化に伴った公共施設運営の重要性~

生産年齢人口の減少、高度経済成長期に建てられた公共施設の建て替え時期の到来といった要素が重なり、公共施設を維持することが地方自治体の財政を圧迫し、近い将来多くの自治体が財政破綻する可能性が極めて高いことを述べた。

これまで注目されてきた公共施設問題は「箱モノ」と呼ばれる来場者のほとんどない博物館や美術館が主であった。しかしながら、現実の問題はさらに深刻であり、教育施設や上水道、市道といった生活に必要不可欠な公共施設の維持すら不可能である。それではどのようにして市民の生活を維持しながら自治体の財政規律の担保を図っていけばいいのだろうか。

施設機能の一体化

前回示した以下の図表で表されるように昭和50年代に建てられた公共施設が平成30年(2020年前後)から一斉に建て替え時期に差し掛かる。

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秦野市も他の地方自治体と同じように生産年齢人口だけでなく年少人口(0歳から14歳)の減少が見られる。一般的なモノやサービスであれば利用者が減った分だけ、提供するモノやサービスを減らすことができる。しかしながら学校教育の場合、生徒が減ったからといって先生をすぐに減らすことは難しい。つまり短期的には「年少人口の減少は一人あたりの管理運営費の増加につながりやすい」。現実的に秦野市の小中学校管理運営費を見ても、平成19年の一人あたり管理運営費が116,377円/年から平成23年の132,083円/年へと約16万円増加している*2

今後も少子化は進行していくと考えられるため一人あたりのコストはさらに高くなる。(過疎地域の小学校にも先生は教科分必要で校長先生も必要であることを考えれば直感的にわかりやすいだろう)長期的には子供の数に合わせて教育分野の管理運営費を減らしていかなくてはならない。逆に高齢化が進んでいくことにより福祉施設などはさらに必要になるだろう。

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こうした現状を踏まえ施設運営の一体化が計画されている。施設運営の一体化を進めることによって現存する教育施設よりもコンパクトな施設で運営することが可能になる。また地域の交流拠点となっている学校や公民館といった施設を無くすこと無く、建替え時に多目的施設として集約することによって、施設の効率的な運用を進めていくことを図っている。

施設運営の一体化は場合によっては住民の施設利用へのアクセスをより難しくするかもしれない。山間部に住む小学生や中学生は町まで降りてきて通学する必要があるし、介護が必要なお年寄りは福祉施設の近くへ住むことが必要になるかもしれない。

反対する人の中には施設運営の一体化というのは果たして効果があるのかと思う人もいるかもしれない。しかし直感的に人がどこかに集まって暮らしたり、コミュニケーションを取ることは効率がいいことはわかる。容易に何かを共同で使うことができるからだ。例えば東京の下町には町内共用の井戸があってそれを皆で使っていた。費用は全員で負担して作った。

それがとなりの家まで何キロもある場所だったらどうだろうか。それぞれの家に井戸を掘る必要がある。すると東京の下町では1本で済んだ井戸が、そこでは家の数だけ必要なので何倍もの費用が掛かる。

今、最も重要な問題は「公共施設を維持するために必要な人がいなくなった」ということだ。普段何気なく使っている水や道路を維持するためにもお金が必要で全員でその費用を負担する制度が税金だ。一人ひとりは税金を払っていても、町全体として必要な額に達しなければサービスは受けられなくなる。こうした事実を前にして施設運営の一体化というのはもっと全国で既にすすめられているべき政策なのだ。

国民全員がよく考えてみよう

これからさらに財政を圧迫するであろう福祉分野についてもう少し考えてみよう。国民健康保険介護保険は本来保険料収入で賄われるものであるが、すでに日本全国の自治体では慢性的に歳入より歳出が多い事実上の「赤字」が一般化している。

この赤字を埋めるためにほぼ全ての自治体は税収からの繰入を行っている。しかし前回も述べたようにほとんどの自治体では今後も税収は増えない。景気が良くなっても税金を払う人が減っているのだし、維持しなければならない施設は毎年増えているのでいくら景気が良くなっても追いつかない。

「税金を払っているから公共施設を使う権利がある」「地域の公共設備を整えて欲しい」こうした要望に答えられたのは20年以上前までの話である。昭和60年より維持しなければならない公共施設が1.5倍に増えたにも関わらず、若者は減り、高齢者はますます増える。

同じように年金は3.3人で1人の高齢者を支えているが、*3、公共施設も同じである。高齢者と生産年齢人口の比率は昭和60年の1:10から1:2になっている。これはつまり高齢者が使う公共施設のコストを若者が負担した時の負割合も30年前の若者に比べて5倍増えているということになる。

これまでの年金や公共施設を維持するためには30年、40年前の若者よりもおそらく10倍は費用を負担しなければならないという事実を前にして、現在の若者は果たしてそのことに気づいているのだろうか、高齢者は何を考えるべきなのか。どのようにしてこの問題に取り組むのだろうか。秦野市の取り組みはこのような世代間問題において、地方自治体の公共施設分野における課題解決策というほんの一例に過ぎない。

それですら全国でこうした取り組みを積極的に始めている自治体が少ないと聞くと、今生きている我々の無作為はもはや犯罪的であるとさえ思えると同時にこの問題のどうしようもないほどの根深さを思い知らざるを得ないなぁと感じる。

*1:グラフの出典はすべて「秦野市役所公式ホームページ/秦野市公共施設白書」 http://www.city.hadano.kanagawa.jp/saihaichi/shise/gyose/shisaku/h-shisetsuhakusho.html

*2:秦野市役所公式ホームページ/秦野市公共施設白書 http://www.city.hadano.kanagawa.jp/saihaichi/shise/gyose/shisaku/h-shisetsuhakusho.html 第4章 第1節学校教育施設 管理運営費等(小学校)

*3:年金受給者を支える現役世代の負担割合と未納者のリスク | はじめて個人年金保険 http://www.paci-nenkin.com/kouteki/1664/