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情報的な何かと政治的な何か

シュバイツァー著-バッハ 「第2章コラール歌詞の成立」

バッハ研究の重要な資料であるシュバイツァーの「バッハ(上下巻)」を読むにあたって、ただひたすらバッハの軌跡を追いかけるというのが今までの学びだっただろう。

しかしながら、今はユーチューブを始めとしたインターネットを使えば、世界中で音声資料が聞けるようになった。こうした環境を活かしてより感性をフルに活かしながらこの名著「バッハ」を読むことでより深く理解できる。

この記事では「バッハ」で紹介されている数多くの楽曲の中でもとりわけ重要だと考えられるものに絞っていくつか紹介していきたい。早速「第2章コラール歌詞の成立」から順を追って見ていこう。タイトル頭についている「P.8」などといった表記は浅井真男訳の日本語版ページを表している。また末尾の「BWV」はシュミーダーによる「バッハ作品主題目録番号」を表している。

P.8深き苦難より我は汝に叫ぶ“Aus Tiefer Not Schrei Ich Zu Dir BWV38”


「エルフルトの提要」の26曲中、ラテン語からドイツ訳された歌が8曲あるがそのうちの一曲である。

P.8キリストは屍布にくるまれて横たわり給いしが“Christ lag in Todesbanden BWV4”


中世に出来た宗教的歌曲であり、当時から伝わった復活祭の歌2曲のうちの一曲。もう一曲は「死に勝ちませる我が救主なるイエス・キリスト“Jesus Christus unser Heiland, der den Tod überwand”」である。

P.10イエス・キリスト、汝は讃えられよ“Jesus Christus, unser Heiland BWV 665”


降誕祭の歌であり、マルティン・ルターがドイツ語に翻訳した歌が付けられている。

16世紀の終わりには教会用歌曲の本格的創作の時代が始まった。フランスが旺盛のもとに民族的国家となり、芸術を愛好する宮廷によって保護させられた文芸が成立しつつある間に、ドイツの詩作は全般的に宗教という軌道に乗せられた。これは30年戦争によって国土が荒廃した時、あらゆる精神的財産のうち宗教のみが残るを得たからである。

P.12全てを神に感謝せよ“Nun Danket Alle Gott”


この曲はバッハのものではなく、マルティン・リンカルトによるものであるが、1648年の30年戦争の終わりを告げる平和の鐘の音を彷彿とさせる歌曲である。

数多く制作された宗教史の中でもバッハは特にフィリップ・ニコライとヨハン・フランクという2人の宗教詩人に惹かれ複数の曲を作曲した。

P.12朝の星はいかに美しきかな“Wie schön leuchtet der Morgenstern BWV 1”


P.12装いせよ、わがめぐし霊よ“Schmücke dich, o liebe Seele BWV 654”

宗教詩の王者とも言われるパウル・ゲルハルトは、ルター派のスコラ学者で、120作の歌曲のうち20篇以上が賛美歌集に納められている。

P.13汝の道をまかせまつれ“Befiehl du deine Wege BWV244-53”


バッハはマタイ受難曲においてこの1節を編曲している。

今回は2章におけるバッハの名曲をいくつか紹介した。最後に後々の歴史的考察から一点申し上げることがあるとすれば、バッハの作品においてこれらの古いコラール*1はバッハの作品中で重要な地位を占めた。しかしこのことが後の宗教合理化時代に彼の作品の価値をを危うくする原因ともなってしまったのである。

*1:ドイツ福音主義教会の会衆賛美の歌。宗教改革者ルターの,特別な音楽的素養をもたない一般会衆にも自国語で歌える礼拝の歌を与えようという意図を出発点として起こり,16世紀から18世紀にかけて,多数の曲が作られた。ドイツ語の抑揚を生かした素朴で力強い旋律と旋法的な性格の強い節回しが特徴 http://kotobank.jp/word/%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AB