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情報的な何かと政治的な何か

中国のリスクと市場動向を踏まえて日本企業のビジネスチャンスを考える

2012年の尖閣諸島問題による大規模な反日デモは日本人に中国リスクというものを再認識させるのに十分な事件であった。日中友好イベントは中止もしくは延期され、日系企業の中国国内での経済活動にも大きな支障が出た。主に取引先が政府との関係上日系企業との取引を自粛するよう政府からの指導もしくは暗黙の圧力を受けたことによる延期が広い分野で発生した。

しかしながら中国は日本にとって重要な国である。戦後早い時期から、冷戦による国交がない状況においても、両国の経済人、文化人を中心に民間交流が熱心に行われたことからも明らかである。新興国GDPが世界経済の半分を占めるまでに至り*1、中でも中国は15%を占める経済大国となりつつある。

このような新興国経済の発展はそのポテンシャルから考えても今後も趨勢的に発展するだろう。現在は輸出を中心に世界経済の成長エンジンを担う中国が、所得水準の向上による内需の拡大に順調にスイッチすることができれば、中国は揺るぎない経済大国となる。

消費市場に近い日本は商品を調達する拠点として重要な役割を担うだろう。人々の好みが多様化し、トレンドが頻繁に変化する現在において、サプライ・チェーンの短縮による新製品の開発プロセスの効率化やアジャイル開発のような高速なPDCAサイクルを回すことの重要性もまた高まっているからである。

現在の中国経済動向は「チャイナ7」と呼ばれる指導部によって計画的に実行される。彼らの定める経済政策計画を見ればまた中国ビジネスにおけるチャンスも明らかになる。具体的には以下の7つに力を入れている。

  1. 省エネ・環境
  2. 次世代IT
  3. バイオ
  4. 先端技術機器
  5. 新エネルギー
  6. 新素材
  7. クリーンエネルギー

これらの重要項目は政府の手厚い支援を受けることができる。減税や補助金といった支援措置の一部は外資系企業にも開かれており特に省エネや先端機器に強みを持つ日本企業には大きなチャンスが存在する。従来の「世界の工場」としての中国から、市場としての中国を捉えるにあたって、以下の図では日本企業からみたビジネスチャンスを表している。
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この図ではこれまでの中国の使い方として意識されてきた「従来分野」と、中国の経済計画における発展可能性の高い「成長分野」の縦軸と、依然として外資系企業にはリスクが高いとかんがえられる「高リスク分野」と企業が安定的に事業を行うことができる「安定分野」の横軸で捉えている。

人治国家と呼ばれる中国において法律の運用は未だに恣意的な部分が多い。しかしながら経済分野においては法制度の透明化、および一律的な運用が進んでいる。特に政府が力を入れる重点政策分野においてはこうした法制度の整備もかなり進んでいるといえるだろう。

反面、外資系企業や民間企業の動きが政府運営に大きな影響を及ぼすと考えられる、金融および資源分野においては、その自由化や制度の運用は非常に曖昧であり、外資系企業にとってはリスクが高い分野でありつづけるだろう。

反面、7つの政府重点分野は政府の強力な支援を受けることができるため成長分野としてはほぼ間違いなく有望な分野であろう。しかし、中国は政策の変更が頻繁に行われることを考えれば、成長産業として有望ではないとされた分野への支援は即打ち切られることも起こりうる。バイオや再生可能エネルギーの投資が長期に渡るものであることを考えれば、まだまだリスクが高い分野である。

そこで、そうしたリスクを避けつつも安定的に成長が見込まれる分野は、消費の拡大に伴い需要が拡大する産業である。特に価格弾力性の低い消費財においては、高い品質がブランドとなっている日系企業にビジネスチャンスがある。

日本製の紙オムツが香港から本土に運ばれているニュースを見たことがある方も多いだろう。香港や台湾、ニュージーランドといった中国と貿易特恵を結ぶ締結国を活用したサプライ・チェーンを活用することによってビジネスを拡大することができる。

今後の中国におけるビジネス戦略を考えるにあたっては「撤退か継続か」といった至近の問題ではなく、中国の市場のどこにチャンスがあるのか。どの分野に自社の強みが生かせるかを考えた上で、製造拠点としての中国だけでなく、成長可能性ある市場として、多国籍なサプライ・チェーンを活かした戦略を立てることが必要だ。