being qua being

情報的な何かと政治的な何か

都市社会学的視点から見る震災後の東京のインナーシティ

都市とはなんだろうか?

まず何を持って都市とするのだとうか。社会学において都市の定義は一概に決められていないが、ここでは実証的社会学で有名なシカゴ学派のA.バージェスの同心円理論を援用する。都市とは「商業地域、工業地域、住宅地域、そして郊外といった地域がある中心から放射状に存在している社会的な空間」であるという。つまりバージェスはこの理論を用いて都市が膨張していくモデルを提示している。

バージェスの都市社会学はその後、新都市社会学と呼ばれる「インナーシティー研究」や「メガシティー論」のような研究に発展した。今回はこのバージェスの議論を念頭に置いて、日本最大の都市である「東京のインナーシティ」に注目する。

東京のインナーシティ

格差社会という語が一般的になって数十年経つが、この日本においてはっきりとした格差を目撃することは多くない。例えば東京という街を歩いた時に、アメリカに見られるスラム街のような治安が非常に悪い地域はそう多くはない。

しかしながらよく見れば東京は都市を象徴する近代的なビルが立ち並ぶ一方で、すぐそばに狭い木造住宅が共存していることが分かる。例えば東池袋や数十年前の六本木などはその代表と言えるだろう。東京都の都市整備局は「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用の指針*1」の中で、東京都の都市を大きく分けて5つに区分している。この都市計画では東池袋や六本木のような都市開発区域を指定することで集中的に開発を行うことが明記されている。

震災と都市計画

東京都内にはこうした木造住宅密集地が2万4000ヘクタールも存在している。それらの地域に住む人の多くは戦後間もないことろから住んでいる高齢者や都心で働く低所得者である。六本木ヒルズの開発に代表されるような区画整理が進められているものの、現在完全に解消されたとは言えず、震災が起これば延焼は免れず、多くの犠牲者が出るだろうと予測されている。

同じく日本の大都市で起きた阪神大震災では、同じような木造住宅地区を中心に死者6398人のうち60歳以上の高齢者は2904人にも上り、全体の46%であった。万が一関東でも震災が起きた場合、先程紹介したような木造住宅、高齢者の多い、広い場所もないスポットを多く抱える東京でも、高齢者の被災者は同じように多くなるに違いない。

一般的に都市の開発もビルや主要道路、人工島の建設のようないわゆる箱モノの開発は進む一方で、通りを一本入った裏側はなかなか進まない。阪神大震災の当時も表向きの都市開発に熱心に取り組んだ神戸市は整備が遅れた地域で被害が大きく、貧しい社会的弱者に大きな被害を出してしまった。

免震を売りにした近代的なマンションやビルが立ち並ぶ地域を開発する一方で、そのふもとに住む都市の住民を守るための開発は遅々として進まない。華やかな近代的な都市だからこそ「灯台下暗し」になりやすい。都市は「近代化」をする時代ではなく「再構築」をすることで、都市の環境を整える時代にあるのだ。

*1:新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針/東京都都市整備局 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/seisaku/new_ctiy/