being qua being

情報的な何かと政治的な何か

Ⅲ−中国の義務教育問題

経済発展の一方で長年の一人っ子政策によって少子化により、両親、祖父母の6人から大切にされ「皇帝」と呼ばれている我が子への教育投資過熱が都市部の富裕層の間で常識となっている中国。今回は特に改革開放以降の中国の義務教育と現在の問題点についてまとめてみたい。

文化大革命による教育システムの大変革。

戦後、中国では初等・中等教育は義務教育とされ、中国国民党の指導する国民政府の下、日本と同じ6・3・3制が取られていた。一方で共産党の支配地区では「解放区教育」と呼ばれた農民の生活に合わせた範囲での教育が行われていた。文革の66年、毛沢東によりすべての学校が閉鎖され、かつての「解放区教育」がもてはやされた。知識層は農村に下放され、教育のシステムは壊滅的な被害を受けた。

その一方で、知識層が農村部で教師として子供たちを指導することになり、また、就学年数が減ったことにより、貧しい農村の子どもであっても学校に行きやすくなったという利点がある。文革前は6割程度であった初等教育の進学率が8割程度に上がったというデータも存在する。

義務教育6・3・3制の再導入と無償化への挑戦。

毛沢東の死後、改革開放によって知識人の地位を回復させ、初等・中等教育の改革を進めようとしたが、文化大革命期に設置された農村の小・中学校が人民公社内部に設置されていることが多く、全国統一的な義務教育を設置することは難しかった。

86年に人民公社の解体が行われ、同時に9年制義務教育の導入を宣言したが、94年には財政、農村部の労働力問題により9年制義務教育を放棄した。しかし、農村部での義務教育無料化を07年に達成し、いづれは9年制の義務教育を復活させることを目標としている。

中国も詰め込み教育からゆとり教育へ。

現状の教育に関しては、詰め込み式の「応試教育」が反省され、個人の資質を高める「資質教育」へと舵を切っている。この点は日本の受験戦争の反省から「ゆとり教育」が生まれ、現在ではゆとり教育への反省をしている日本を見ていると大変面白い。

また、その他の問題点として貧困、都市農村戸籍制度、教育予算が少ないこと、高級中学の偏在問題が上げられており、教育予算については、かつて全人代にて「教育予算はGDPの4%」と宣言したはずだったが、これは守られず、さらに配分される予算のほとんどが大学、それも北京、上海の有名大学にほとんどが分配されてるという問題がある。義務教育に掛ける予算は増加はしているがあまりにも少ない。先進的な研究や学問を行う高等教育に偏重していることは、先日の反日デモでも取り上げた若者の高学歴願望による、近年の大学生の過度な増加とも一致している。

10/10/24 中国の若者達の不満と次期国家主席 習近平

http://d.hatena.ne.jp/hapwish/20101024/1287934384

9年制義務教育という目標の達成を果たしてもすぐには成果が出ない。急速な発展の中で軍事的、経済的な力を付けるために高等教育機関に資源を配分することは合理的なように思われるが、50年100年というスパンで見たときに、貧しい人が教育を受けていないということがどのような影響をおよぼすか予想することは難しいが、国の経済発展の足かせになる可能性も否定出来ないだろう。