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情報的な何かと政治的な何か

日本の自動車業界は2050年に終わる?

経済産業省と国内の主要自動車メーカーの役員が集まり「次世代自動車戦略委員会」という委員会が4月上旬開かれたが、その報告書を読む限り日本の自動車産業自体が斜陽産業化を自ら招いてしまったように思う。

今まで日本で自動車産業がこんなにも発展してきたのは高い効率の内燃機関を開発して、安価かつ省エネでパワーもでるようなガソリン車を研究して来た。同じく高い技術を持つドイツは、ベンツやBMWやアウディーといった高級車で世界に売り出すことに成功した。

大衆車での競争をするとコストパフォーマンスにおいては日本には勝てないと判断したと言うこともあるだろう。フォルクスワーゲンもヨーロッパでは大衆車であるが、コストパフォーマンスでは日本車に到底及ばない。


このように日本車はその優れたガソリン車技術でリードしてきた。しかしいつまでも改善だけで進んでいけるわけではない。今回の研究会での結論として「環境性能に特に優れた自動車を今後も普及させるべき」と言うものがある。

これが意味するのは「環境性能に優れたガソリン車を今後もメインで売っていきましょう」ということだ。これを読んで私は「日本のエンジン技術を長期的に生かすつもりはないのか?」と疑問に思った。

確かにリッター24キロも走るコンパクトカーを作れるのは日本だけであり、その省エネ技術は世界最高レベルであることは間違いない。今後も研究開発によってリッター30キロを超えるガソリン車が生まれる可能性は極めて高い。しかしプリウスが97年に発売され既に13年も経っているのにもかかわらず、これ以外にエンジン技術を使った新世代の自動車を開発する努力をほとんどしてこなかったような気がする。


これは、失われた20年のさなかにデフレと経済の停滞から日本の消費が異常に低水準であったことが大きく関係しているのだろう。長い不況の中、日本で車が売れないので、外国に燃費がよく安い日本製ガソリン車を大量に輸出してきたからなのだ。

アメリカで意識され始めた省エネブームによって日本車を購入しする人が増え、新興国では所得水準の上昇によってあこがれであった日本製自動車が手の届くようになった。アメリカに売るにせよ、新興国に売るにせよ求められるのは「ガソリン車」である。需要がガソリン車であった以上、自動車メーカーはガソリン車を中心に開発することに傾注しすぎてしまった。

そのため、プリウスが市場に出て13年という時がたったのにもかかわらず、それらを安価にする努力はほとんどされてこななかったのではないだろうか。*1


そんなことになってる間に時代は電気自動車へと着々へと変わってしまった。あのオバマ大統領もアメリカで電気自動車を普及させると言う。「じゃあ日本の自動車会社も電気自動車の開発に切り替えていけばいいじゃん」と思う人もいるかも知れないが、ハイブリッドやクリーンディーゼルと電気自動車は、動力部を作るために必要な技術が全く違うと言う点が問題なのだ。

エンジン内で効率良くガソリンを爆発させてうんぬん…と言った今まで自動車に絶対必要であった技術が全く使われない。モーターと充電池さえあれば外側に自動車の皮をつければ完成するのが電気自動車なのだ。

だから、わざわざ自動車メーカーが車を作る必要はない。パナソニックでもアップルでもサムスンでも作ろうと思えば作れてしまう。そうなると、日本の自動車産業は壊滅はしなくても、少なくとも内燃機関系の技術や会社は不必要とされてしまうだろう。


日本の自動車産業はいつの間にか自分が一番得意であるはずのガソリン車の時代から、その技術を生かすことが出来ない自動車の時代を作ってしまったのだ。ハイブリッドでもクリーンディーゼルでも、自分達の技術をより多く生かすことの出来そうな新世代自動車を普及させようと努力すべきだった。そうしないまま旧世代の技術を使い続けたがために、もはや新しい時代では今まで培ってきた技術が陳腐化してしまうというのは悲しいことだ。

今後はコストで世界を相手にすることはできなくなる。その分、日本車の利点のひとつである「安全性と信頼」は絶対に失ってはならない。電気自動車になったとしても日本車の魅力を生かすことは十分にできる。

ドイツの自動車メーカーのように高級化路線を求めるにしても、日本の電気・電池メーカーの高い技術を持つ企業と協力することによって競争力を高めるにしても、安全性と信頼は最低限必要とされるものだからだ。



@2020年に新車販売の50%以上がガソリン車で、CO2排出量の2割を占める自動車が25%削減を目指すわけですが、「発展途上国におけるCO2排出削減対策が必要不可欠である」という訳の分からない発言も発表されてますが、こちらは産業界が中心となった研究会だからしょうがないのでしょう。

日本は、国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議(COP15)の「コペンハーゲン合意」に基づき、(中略)2020年に温室効果ガスを1990年比25%削減するとの目標を条約事務局に提出したところである。(中略)
世界全体でのCO2排出状況を見た場合、今後は発展途上国からのCO2排出量が急増する見通しである。(中略)地球温暖化の解決のためには、発展途上国におけるCO2排出削減対策が必要不可欠である。

http://www.meti.go.jp/press/20100412002/20100412002-3.pdf

*1:電池の開発が追いついていなかったこともちろんある